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メンタルヘルス ~ラインケア編~

ゴールデンウィークが明け、暑い日が多くなってきましたね。
暑熱環境における業務をお抱えの事業所様は、熱中症への準備を始めましょう。
5月は熱中症のほかに、五月病と言ってメンタルも落ち込みやすい時期としても有名で、上司として、衛生管理者として、周囲スタッフの不調に気づき適切に対処する必要が生じます。
今回は、管理監督者へ実施が求められるメンタルヘルスケア(ラインケア)について以下の順にご説明いたします。
- 〇メンタル不調へ対応が必要な理由
- 〇何をしたらいいの?
- ・メンタル不調への正しい理解
- ・4つのメンタルヘルスケア
- ・メンタル不調の3つのサイン
- ・ラインケア
- ①普段のコミュニケーション
- ②「いつもと違う」に気づく
- ③話を聞く
- ④繋ぐ
- 〇まとめ
〇メンタル不調へ対応が必要な理由
なぜ管理監督者がメンタル不調へ対応する必要があるのでしょうか?
それはズバリ法令遵守と生産性キープのためです。
まず法令遵守ですが、労働契約法第5条では「事業者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をするものとする」と、労働安全衛生法第3条では「事業者は、快適な職場環境の形成と労働条件の改善を通じて労働者の安全と健康を確保しなければならない」といった記載があり、事業者は社員の安全と健康へ配慮する義務が定められています。
よって、この辺の法令遵守ができていないことに起因するメンタル症状の悪化は法令違反とみなされ、事業者の書類送検などの刑事罰、被災者周辺からの損害賠償請求などの民事的な責任追及、操業停止や監督指導などの行政処分を受ける可能性があります。
円滑な事業経営のためには、メンタル不調を含めた社員の健康に配慮するための措置実施が必要不可欠なわけです。
次は生産性キープについてです。
実はメンタル不調を引きずりながらの就業は、生産性を著しく低下させてしまうんです。
2022年に横浜市立大学と産業医科大学が行った研究では、メンタル不調を引きずりながら就業した場合と休職した場合の経済損失が比較検討されています。
プレゼンティーズム(疾病を抱えながらの就業)の評価は、仕事の「量」と「質」の低下の11段階評価と症状持続日数を掛け算して年間損失日数を算出し、アブセンティーズム(疾病休業)の評価は、欠勤日数のから年間損失日数を算出して、それぞれの年間損失日数と性別・年齢別の労働参加率と平均日収(厚生労働省統計)を掛け算し、経済的損失を金額換算しました。

「メンタル不調の影響、年間7.6兆円の生産性損失に —GDPの1.1%に相当と試算」横浜市立大学
結果、疾病を抱えながらの就業による損失額は年間約7.3兆円、休職した場合は0.3兆円で、合計すると日本の国内総生産(GDP)の約1.1%に相当し、65歳未満における精神疾患の医療費の7倍以上の損失になることが分かりました。
つまり、メンタル不調を抱えながらの就業は、生産性の著しい低下を招いてしまうんです。
以上の点から、円滑な事業経営のための法令遵守と、企業としての生産力確保のために、メンタル不調への対策が必要不可欠であると言えるのです。
〇何をしたらいいの?
・メンタル不調への正しい理解
まずはメンタル不調への理解を深めましょう。
偏見や不理解がある状態で、本人へアプローチしても決して良い結果は得られません。
突然ですが質問です。
甘えている、怠けている、仕事をなめている、我慢が足りない・・・
こう思った方は一定数おられると思います。
管理監督者がこのスタンスで対応してしまうのは非常に危険で本人をさらに追い込みかねません。
まずは一旦こらえ、心がSOSを求めるサインかもしれないと踏みとどまりましょう。

人間はメンタルが悪化すると、脳が自身を守るために自分の意思とは関係なく、情報の遮断や体力の温存を図ります。
その結果として症状が出ている可能性を常に念頭に置いておく必要があります。
ケガではないので周囲から分かりづらく、原因もセンシティブだったりすると一人で抱え込んで苦しんでいることもよくあります。
生涯で5人に1人はメンタル不調に陥ると言われており、自身の周囲で発生してもおかしくない事象であることをまず認識しましょう。
また介入が早期であればあるほど、回復も早く後遺症も残りづらいです。
・4つのメンタルヘルスケア
メンタルヘルスケアには、①セルフケア→②ラインケア→③事業場内専門スタッフ等によるケア→④事業場外資源によるケアの4段階があります。
この流れに乗りながら、メンタル不調の各段階に合わせて適切な人材が介入していきます。

セルフケアは、自分自身で行うことができるケアのことです。自らのストレスに気づき、各自で予防対処することを指します。
今回は、当HPの閲覧者様に企業の衛生管理者様や管理監督者様が多いことを考慮し、セルフケアはまた別の機会に解説させて頂きます。
ラインケアは、主に管理監督者が行うケアで、今回の記事の本題になります。
日ごろの職場環境の把握や改善、部下の相談対応を行うことが求められます。
後ほど詳しく解説していきます。
事業場内外の専門スタッフによるケアですが、これは企業の産業医、保健師、衛生管理者や人事労務スタッフ、地域産業保健センターなどの支援を受けることが挙げられます。
ラインケアの段階でご介入頂きました管理監督者様は、衛生管理者や産業医へお繋ぎ頂くことで、メンタルヘルスケアはこの段階へステージアップします。
・メンタル不調の3つのサイン
メンタル不調には、以下の3つのサインがあります。

身体症状の異常は、頭痛や嘔気、下痢、動悸、過食、拒食、血圧上昇、胃潰瘍、蕁麻疹等が挙げられます。
精神面の異常は、情緒不安定、性格変化、希死念慮などの抑うつ状態が所見として現れます。
以上の2つはセルフケアに分類され、自身で気づける範疇の異常であり、周囲が気づくのはかなり困難です。
この二つに関してはセルフケアの記事で詳しく解説いたしますね。
3つ目の行動面の異常は、出勤状況の悪化、業務実績の低下、周囲との摩擦、服装の乱れなどが該当し、今回重点的に解説するラインケアで周囲が気づくべき異常に該当します。
管理監督者は、この辺を注意して観察する必要があります。
・ラインケア
ラインケアではこの4つを実践しましょう!
②「いつもと違う」に気づく
③話を聞く ④繋ぐ
①普段のコミュニケーション

相談しやすい環境を普段から作っておくことが重要です。
周囲スタッフの通常の様子を知っておくと不調や異常へ気づきやすくなります。
基本の挨拶を行うことはもちろん、報連相を上司からも確認していくなどの方法でコミュニケーションを取っていくのが有効です。
自分の話ばかりしてしまっていないか、突き放すような言い方をしてしまっていないか、この辺に注意して接してください。
②「いつもと違う」に気づく
普段の様子を把握したら、次は「いつもと違う」所見がないか観察しましょう。
先ほどの「メンタル不調 3つのサイン」の行動面の異常に該当する所見です。
大きく分けて、勤怠、行動、表情、仕事の4つに分類されます。

勤怠
遅刻、欠勤、早退が多くなり、連休明けに出勤できなくなったり、有給を使い果たしたりします。
他にも、作業効率の低下や欠勤による業務の遅れを取り戻すため、業務量と比較して残業や休日出勤が増えてきます。
行動
動作や反応が鈍くなり、会話がかみ合わなくなります。
口数が減ったり、態度が反抗的になったりすることも良く見受けられます。
タバコやコーヒーの小休止が異常に増えたり、机周りが散らかるのも分かりやすい所見です。
表情や身体
活気がなくなってきます。
ヒゲや寝ぐせ、衣服の汚れなど身だしなみが乱れ、肌荒れや顔色の悪さが目立ってきます。
不眠や疲労感の残存、食欲不振などの症状があることを周囲へ漏らしていたりすることもあります。
仕事
仕事の能率が低下し、ミスや遅延が発生します。
納期が守れずイライラすることが増えるため、他部署からのクレームや同僚とのトラブルが増えるようになります。
③話を聞く

周囲が分かるほどの症状が出ている場合、自身ではもうどうにもならなくなっている可能性が高いです。
しっかり話を聞いてあげましょう。
管理監督者自身も時間的に精神的にゆとりのある状態で面談を実施し、眼や表情をよく観察して話すペースを合わせることが重要です。
相槌やオウム返しなどの手法で共感を示したり、普段のコミュニケーションによるベースの信頼関係があったりするとより詳しい話を引き出しやすいです。
逆に気を付けるべきこともあります。
面談情報を周囲へ漏らす、自身の意見を押し付ける、気持ちや気力の問題にする、結論を急ぐ、無理に励ます、こういったムーブはすべて逆効果です。
④繋ぐ

本人の話を聞き、状況が分かってきたら衛生管理者や総務窓口へ繋ぎましょう。
行動面に異常が出ている時点で、医学的な介入や就業の可否について専門家の意見を聴取する必要性が生じており、管理監督者が1人で抱え込んで解決する必要はありません。
産業医や産業保健師へ連絡がいくので、後日産業保健スタッフによる面談が実施されます。
面談時に上司へ同席や別日に聴取を求められる場合もあります。
個人的には、ここまでご対応頂いた管理監督者様自身の精神的な疲労や業務調整などによる肉体的な疲弊も心配です。
〇まとめ
いかがでしたでしょうか?
対応した後にちゃんと繋ぐ先が用意されている環境であれば自分にもできるかもと感じた方が多いと思います。
上司によるケアが必要と言われても具体的にどうすべきかを学ぶ機会は決して多くはありません。
メンタル不調に対する理解を深め、ケアが必要な理由とその方法を整理し、適切なメンタルヘルスケアを実践することで事業所のさらなる衛生水準向上を目指しましょう。